自分のスキルや経験に合った仕事を見つけるには?

オーストラリアの永住権を持つ熟練移民の4人に1人が、自分のスキルレベルに見合わない職務に就いており、その結果、何億ドルにも及ぶ経済損失が生じていることが、報告書で明らかになりました。では、新規移住者が自分のスキルや経験に合った仕事を見つけるにはどうしたらよいのでしょうか? 専門家がいくつかの方法を提案します。

white hats - Architects working on a building design

Architects working on a building design Source: Anamul Rezwan/Pexels

マジンさん(41)は、3年前に難民として来豪しました。

マジンさんは妻と2人の娘とともに、イラク北部・デュホクに暮らし、電気技師として働いていましたが、ISISがこの地域を占領したため、家族とともにレバノンに逃れ、難民としてオーストラリアに来ることを申請しました。


ハイライト

  • 永住権を持つ熟練移民の約4分の1が、現在の仕事に対して資格過剰であることが報告書でわかった
  • オーストラリアでの実務経験不足や言語の問題が最大の障壁となっていることが多い
  • 専門家によると、必要な認定書やライセンスを取得すること、時には一歩引いてみることも重要

マジンさんは、来豪して3年が経ちますが、いまだに自分の専門分野の仕事を探していると言います。

「私はデュホク市で9年間、電気技師として働いていましたが、SeekやIndeedなどのウェブサイトでさまざまな仕事に何度も応募しましたが、残念ながらチャンスはありませんでした」
electrical engineer
مهاجران فقدان تجربه کاری محلی و مشکلات زبانی را موانع اصلی استخدام خود در حوزه تخصص شان می‌دانند. Source: Pexel/Pixabay
オーストラリア経済開発委員会(CEDA)が2021年3月に発表した報告書によると、永住権を持つ熟練移民の約4分の1が、現在の仕事に対して資格過剰であることがわかりました。

これを経済全体で見ると、スキルと仕事のミスマッチにより、2013年から2018年の間だけでも、移民労働者は少なくとも12億5,000万ドルの所得を放棄していることが明らかになりました。
また、オーストラリアがこのようなスキルにアクセスできないことは、生産性やイノベーションの損失を通じて、経済にも大きな影響を与えると、CEDAは述べています。

現地での経験不足

オーストラリアでの仕事の経験がないことや、現地のネットワークにアクセスできないことが、格差の理由としてよく挙げられ、次に言葉の問題があります。

マジンさん、そして教員の仕事を探しているマジンさんの妻も、これらの問題は「最大のハードルである」と語ります。

「応募すると必ず現地での経験を求められますが、私たちの経験はすべて海外で得たものです」

「私たちが失業しているもうひとつの理由は、最高の言語レベルを求められるからです。これも大きな障壁です」

「雇用への道筋を理解すること」

セトルメント・サービス・インターナショナル社(SSI)のシニア雇用オペレーションコーディネーターであるデイビッド・フォーブス氏は、来豪したばかりの熟練移民にとって重要なのは、雇用への道筋が自分にどのように機能するかを理解することだと述べています。

「熟練移民の問題は、雇用への道筋を知らないことだと思います。特にスキルを必要とする仕事になると、より複雑でニッチで、多くのことが関わってきます」
engineer planning a dam
An engineer planning a dam. Source: ThisIsEngineering/Pexels


ライセンスの取得、登録、ギャップ・トレーニング

ビザ・エージェントで、人材紹介会社、コネクティング・グループのマネージング・ディレクター、フレッド・モロイ氏によると、移住者にとって重要なことは、希望する職種に特殊なライセンスや登録が必要かを、できるだけ早い段階で確認することだと言います。

「ホワイトカードやブルーカード、高所作業サティフィケート、子供を相手にする職業の場合はワーキング・ウィズ・チルドレン・サティフィケートなど、職業に応じたライセンスや登録が必要になることがよくあります」

オーストラリアの雇用市場に適した履歴書の書き方

ナディナ・ベンベニスティさんは、NBキャリアコンサルティングの履歴書作成・キャリアコーチ・雇用のスペシャリストで、求職者が適切な仕事を、また雇用者が適切な人材を見つけられるようサポートしています。

ベンベニスティ氏によると、求職者が何度も不採用になる理由のひとつに、履歴書に適切なキーワードを使っていないことを挙げています。

「オンラインで求人広告を検索し、採用担当者がその仕事をどのように伝えているか、市場調査をたくさん行ってください。また求人広告で使用している言葉や表現を調べ、同じような言葉を現在の履歴書にも使用して、履歴書をオーストラリア風にしてください」

アビー・ジョシーさんは、建設プロジェクトマネージャーおよび開発マネージャーとして働いています。

彼女はインドとサウジアラビアで16年間、建築家およびデザインマネージャーとして勤務し、開発やプロジェクト管理などのさまざまな役割を担当しました。

彼女は2020年2月に来豪し、キャリア・コンサルタントの助けを借りて6月に仕事に就きました。

「キャリア・コンサルタントは、私の履歴書を全面的に書き直してくれました。コンサルタントによると、履歴書はコンピューターシステムに通されるため、採用担当者は履歴書を読みません。重要なのはキーフレーズだと言っていました」

「簡単な例を挙げると、私たちが "プロジェクト提案書 "と呼んでいるものは、ここでは "ビジネスケース "と呼ばれています」
resume writing
Source: Ron Lach/Pexels

関連する仕事にのみ応募

ベンベニスティ氏は、応募する仕事のターゲットを絞ることも重要だと言います。応募者は募集要項をしっかりと読み、それが自分の海外での経験と関連しているかどうかを確認する必要があるとしています。

職探しに苦労している人は、求人広告を見つけたら何でも応募してしまうものですが、それは仕事の可能性に「悪影響を及ぼすこともある」と述べています。

「仕事に適していない求職者から繰り返し履歴書が送られてくると、求人広告を読んでいないという印象をリクルート会社に与え、履歴書がブラックリストに載せられてしまうのです」

一歩引いてみる

モロイ氏によると、新しい移住者は、現地のシステム、業界標準、労働文化を理解するために、最初は一歩引いて行動することも必要であると述べています。

「永住ビザで来豪しても、特定の職業や商売をするためのライセンスを取得していない場合もあります。そこで、海外との違いを理解するために、例えば電気工事士のアシスタント業務に就くことなどが挙げられます」
また、現地で関連分野の職に就き、それを足がかりにするのも良い方法であるとモロイ氏は述べています。このほかにも顧客と接する仕事では、言語やコミュニケーション能力の向上に努めるのもお勧めです。
phone call
Source: Ono Kosuki/Pexels

ネットワーキングとコネクション

ベンベニスティさんによると、求職者はただオンラインで応募するのではなく、採用担当者と直接会話をすることが重要だと語ります。

「もうひとつのヒントは、たくさんのネットワークを作ることです。LinkedInは、人とのつながり、ビジネスリーダーや人材を探している人とのつながりを持つのに適したツールです」。

「また、求人広告に電話番号が記載されている場合は、採用担当者に直接電話をかけて関係を築き、自分のスキルが市場で最も適している場所を見つけることです」と付け加えます。
engineers planning
Source: Pixabay
SSIのフォーブス氏は、熟練移民が適切な仕事を見つけることができれば、オーストラリアの企業により多く貢献できるとしています。

「海外での経験があるために、仕事の進め方が多少異なるかもしれませんが、重要な問題を解決するための新しい視点を持っていることもわかりました」

「彼らはこの国に来られたことにとても感謝しており、まさに模範的な従業員です。雇用主も彼らの姿勢に満足しており、『この前はよいエンジニアを見つけくれた、他にはどのような人材がいるのだ?』とまた戻ってきます」

 

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Published 29 July 2021 8:26pm
By Chiara Pazzano
Presented by Yumi Oba


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