先住民の天文学と空が伝える文化的習慣

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The celestial Emu in the Milky Way - Image Peter Lieverdink.

天体に関する知識は、先住民の人々の生活や法律に大きな影響を与え、重要な役割を果たしてきました。


きらめく星々の下、無数の月の満ち欠けを経て、オーストラリアの先住民文化は何千年にもわたって続いてきました。

天の川や流れ星、月の周期など、先住民の天文学と星に関する知識からは、多くを学ぶことができます。

天文学は天体やその現象を研究する学問ですが、先住民にとっては、星と大地の深いつながりに関する「知識」であり、大地の出来事は、すべて、空に反映されると考えられています。

アボリジナルやトレス海峡諸島民にとって、「空」とは物語や歌、儀式、そしてアートとして何世代にも渡り受け継がれてきた文化を指すものです。
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Moon over the Sydney Harbour Bridge – image Eclipse Chasers.
シドニー生まれのガディガル族の女性、アンティー・ジョアン・セルフは、母親や長老、知識を持つコミュニティの人々から、天の川にまつわる物語を学びながら、育ちました。

「6万年以上にわたり、ファーストネーションズの人々は空を見上げ、星や惑星、月、太陽、大気を観察することで、天気の変化や潮の満ち引きを予測し、陸や海での移動、食料の収穫、狩猟、儀式などを計画してきました。また、物語を世代にわたって伝える手段としても、空を読み取ることは重要でした。空を見上げることは、昔も今も大地とのつながりを深め、自分たちの宇宙での位置を知る大切な方法です。」

先住民の星に関する知識は、彼らが住む世界や、その中での役割、そして責任を、理解するための方法でもあります。

「『上にあるものはすべて、下にもある』ということわざがあります。星を使って、道筋であるソングライン、コミュニティ、重要な儀式の場所などを見つけることができます。しかし星だけではすべてを理解することは難しく、助けが必要です。ですから踊りや言語、自分の土地とのつながりを知ることで、すべてが明らかになります。」

メルボルン大学物理学部で文化天文学の准教授を務めるデュエイン・ハマカーさんは、アボリジナルやトレス海峡諸島民のコミュニティと協力し、彼らの伝統的な知識を記録しています。
長老たちは、空にあるすべてのものが大地とつながっていると言います。周りの世界を理解したければ、星を見なさいと。
Duane Hamacher.
「人類は常に星と深いつながりを持っていて、星は教科書や地図、法律書、社会的ルールブックとして機能します。さらに、星は時間や記憶を蓄える場所としても使えるのです。星を利用することで情報を記憶に刻むことができ、純粋な形で何千年もの間、受け継ぐことができるのです。」

空にあるすべてのものには意味と目的があり、太陽、月、星の動きは季節の変化、天候のパターン、植物や動物の行動を予測するために使われます。
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The Australian sky at night - Image Ken Cheung.
「先住民の星に関する知識で最も重要なのは、それがすべてと関係しているということです。季節が変わる時期や、雨が降るかどうか、動物の行動、植物や食料を植えたり収穫したりする時期を知りたければ、星を見て理解する必要があります。」

このように世界を包括的に見る考え方は、アボリジナルやトレス海峡諸島民の文化の中心にあると、ハマカー准教授は説明します。

「トレス海峡では、長老たちは星のきらめきを観察することについて語ります。星がどのように輝くかを読み取る、つまり星の性質や位置の変化を観察し解釈できれば、大気の状態が分かり、嵐が近づいているか、季節が変わるかどうかを知ることができるのです。」

毎晩、星々は前日よりも4分早く東の空に昇ります。1年を通じて、星々は地球が太陽の周りを回るにつれて一周します。

この天体の変化のサイクルは、大地の変化と一致します。

また先住民の天文学には、「空のエミュー」または「ダーク・エミュー」と呼ばれるものがあると、アンティー・ジョアンは説明します。

これは天の川の暗い部分にある星座です。

「空のエミューについて気に入っているのは、先住民の人々が星だけでなく、空の暗い部分も利用していることを示している点です。また、地上のエミューの行動も反映しているため、地上でエミューがしていることを、空でも見ることができるのです。」
The Dark Emu rising - Image by Geoffrey Wyatt - Sydney Observatory.png
The Dark Emu rising - Image Geoffrey Wyatt.
またダーク・エミューの星座は、4月と5月の夕暮れ後に南東の空に現れ始めると、ハマカー准教授は付け加えます。

「それは、エミューの繁殖時期と一致します。その暗い星座が6月と7月に真上に高く位置するのは、エミューが卵を温めている時期です。そして、星座が南西の地平線とほぼ直角になるときが、エミューがヒナを育てる時期、つまりヒナが孵化する時期です。」

また、空のエミューは先住民の伝統的な物語にも登場し、重要な科学的情報を記録しています。

「ビクトリア州南部のグナイカナイ族の長老たちは、月の男がエミューを狩っていたという物語を伝えています。エミューは川にかかる木の上を走って逃げようとしましたが、足を滑らせて水に落ちました。今では、この物語が空に描かれているのを見ることができます。エミューのシルエットは、天の川、グナイカナイ族の言葉でワランブールと呼ばれる空の川に横たわっているのです。」

「川に横たわるヤランの木は、エミューの頭の隣にある南十字星です。月の男が現れると、エミューはその狩人から隠れます。これは、月の明るい光が天の川の詳細をかき消し、エミューが見えにくくなる様子を表しています。」

また、流れ星のような夜空に一時的に現れる現象も、先住民の文化では特別な意味を持っています。
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Aunty Joanne Selfe - Image supplied. Associate Professor Duane Hamacher, image – Amanda Fordyce.
ハマカー氏によると、長老たちはこれらの要素が、人生や死、そしてアイデンティティを理解する上で重要であることを教えています。

「オーストラリア北部の多くの地域では、明るい流星は邪悪な霊的存在に関連しています。流星は、空を飛ぶ細長い存在を表しています。トレス海峡では、明るい流星を『マイアー』と呼び、長老たちは、これは亡くなった人々の魂が死者の国『ベイグ』に向かってロケットのように空を横切っていく姿を表していると説明しています。」

アボリジナルとトレス海峡諸島民の人々にとって、星との関係はアイデンティティや帰属感を表します。それは自然界へのつながり、存在感、そして文化への結びつきを含みます。
先住民の天文学では、宇宙の起源は非常に古い時代のチュクルパに遡ります。西洋ではこれをドリーミングと呼びますが、基本的にはすべてが存在するようになった遥か昔の時代です。
Aunty Joanne
「興味深いのは、この歴史では私たちが理解する時間や歴史が関わっていないことです。私たちには『エブリウェン』という概念があります。精霊たちが地球を歩き回り、山や川、空、そして周囲のすべての天体を作り出しました。これによって、私たちが実際には宇宙の共創者であるという理解が得られます。観察者と観察されるものが同じであるということです。」

このように、先住民の星に関する知識は、過去、現在、未来を結びつける包括的な知識の集まりであり、先住民文化の中心的な要素です。

詳しくは、  と まで。

また、Australia Explained の過去のエピソードはから。

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